■この記事のターゲット
・製造業の製造技術部、生産技術部の役割は?
・製造技術部、生産技術部のあるべき姿は何なのか?
筆者である僕は、製造業の開発部門と品質保証部門の経験があります。
過去の記事では、「品質保証部門の役割」、品質保証部門視点での「製造部門の役割」について述べてきました。
今回の記事では、製造部門(会社によっては生産部門とも言う)を技術的にサポートする「製造(生産)技術部門の役割」について述べてみたいと思います。
これまでの製造業経験から現時点で僕が思う「製造技術部門の役割」は・・・
大きく括ればこの2点ですかね。
技術的サポートの中には、当然「品質」を含みます
製造に必要な設備選定、設備の設定条件設定、設備の日常管理設定などを通して、製品設計通り(=お客様の要求)の加工物が安定的に出来上がるようにすることが、結果的に品質に結び付くからです。
なので、
「品質は品質保証部が・・・」と言うような考えではいけません!
また、淡々と製造の技術サポートだけに甘んじていてはいけません。
他社では加工が困難なモノ、人でなければできない作業を、
「弊社なら加工できます!」
「弊社なら人件費を大幅に減らすことができます!」
と言える製造メーカーであれば、仕事が舞い込んでくる確率も高くなるでしょう。
自社が他社とは違う技術力を持つために、ノウハウの蓄積、新たな製造・加工方法の基礎研究も意識するべきです。
それでは、製造技術部門の役割について詳しく述べていきます。
製造部門を技術的に支援する
「技術的に支援するとは何なのか?
「製造部門」の役割は、机上で設計された製品を机上で設計されたプロセスの中で、人や設備を設計通りに動かすこと。
つまり、設計されたものを現実の世界に再現する部門です。
製造計画に合わせたリソースの確保、設計された日常管理の順守、ヒューマンエラーの改善、生産性の改善などが主な業務になるでしょう。
では、その製造部門を製造技術部門はどのように支援することになるのか?
製造部門が設計通りのモノを効率的かつ安定的に再現できるようにするために、以下のような支援を行うことになります。
例えば、
・高確率で精度の高い作業が行えるような手順を作る
・製造に必要な設備の仕様決め、製造条件を設定し、日常管理方法を決める
・生産性向上のための技術的サポート(加工能力UPによる納期短縮、省人など)
この辺までは誰もがイメージできると思います。
しかし、品質に対しての意識が疎かになっている製造技術部門も少なくないと感じています。
製造方法やプロセスを「設計」する中には、再現性の高さと信頼性の高さ、安全性の高さが求められます。
再現性の高さ:誰が何度やってもバラツキが設計の範囲内におさまること
信頼性の高さ:さまざまな変化や不安定要素 (温度、人、経年など) に対して、長期間変わらぬアウトプットを出せること
安全性の高さ:作業する人がケガなく作業できるように最大限配慮すること
これら3つが、製造技術部門が意識すべき「品質」だと思います。
(もちろん品質保証部門も全体を監視する立場として、一緒に作り上げていく)
これらが疎かになると、いろんな実害がでてきます。
・工程内不良が増えてロス費用がかさむ
・製造工程内で検出できない不良が市場に流出する
・社内で働く人がケガして労災になる
製造技術部門だけの責任ではありませんが、少なくともすべての部門が意識しないといけないことです。
製造技術部門の役割は「製造部門を技術的に支援する」
その支援の中には、上記のような意味があると思って業務を遂行すると質の高い組織となることは間違いないでしょう。
・作業指示は全く素人の人が見ても誤った解釈をされず、狙った作業ができるような指示にする
・製造設備は設備のバラツキも考慮した設定になっているか、できるだけ汎用性を持たせた条件となっているか、日常点検の項目や消耗品交換周期が妥当かしっかり検討
・データベースのメンテなどを他部門に任せる場合は、間違いや手間が少なくなる運用にして渡す
・作業する人間が感電やヤケド、ケガが発生しないような安全対策をとる
などなど、やるべきことはたくさんあります。
製造部門は大切なお客様と思って心遣いを忘れないようにしましょう。
製造技術の研究・開発を行う
製造メーカーに最も大切なのモノは、製造する製品の商品力と言っても過言ではありません。
しかし、世の中にありふれた製品を製造している、特に受託製造の会社では商品力が他人任せになってしまいます。
ならば、自社商品を開発するのも当然ですが、製品を製造する技術も開発していくことも大切です。
自社でなければこのコストで製造することはできない
自社の製造技術でなければ、そもそも製造することができない
といった希少な製造技術です。
買ってきた設備を効率的に組み合わせることだけに長けただけだと、競争力は次第に失われてしまいます。
しかし、他にはない製造技術を生み出すことによって製品のコストや工法の制約がなくなるとしたら・・・
製品開発の制約が少なくなり、新しい価値を持った製品を生み出すことにもつながるのです。
もちろん新しい技術開発は口で言うほど簡単ではありません。
新しいと思っていても他社ですでに特許化されている、開発に取り掛かっても失敗ばかりですぐに成果が出ないなんてことはザラにあります。
それでも製造業として今後も企業を存続させていくためには、新しい技術を生み出す必要があるのです。
それが自社内のみで行うのか、他社から技術を買うのか、共同で開発するのかは手段は何でもいいと思います。
価値ある知的財産を増やすという役割も技術部門にとって大切であることは根底に持っておくべきだと思います。
強い技術力を持った製造技術部門は、会社にとっても本当に頼りになる存在であることは間違いありませんよ!
まとめ
製造技術部門の役割は、
製造メーカーにとって製造技術部門は欠かせない重要な部門の一つです。
開発部門にとっても、製造部門にとっても、品質保証部門にとっても非常に頼りにしている部門。
高いモチベーションと技術革新で日本の製造業の発展のために頑張ってほしいと思います!
おわり
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