- この記事を読んでほしい人
- 製造業の品質保証部門で働く人で…
・ラクになって余裕を持った仕事をしたい!
・達成感が得られなず、やりがいを感じられない・・・
なかなか不良やクレームが無くならない環境で働く品質保証部門の人は、一度はこう思ったことがあるんじゃないでしょうか?
どのようにマネジメントしたら責任部門が自律して品質改善してくれるだろう?
直接手を下せない中で、どうしたら我々の仕事にやりがいをもてるんだろう?
どうすれば僕たちの仕事がラクになるんだろう?
と。
製造業の品質保証部門で10年以上働く僕も、いまだに自問自答しながらの業務です。
品証部門員としての僕の理想は、過去記事にも書いた通り「最終的には品質保証部門がなくなってもいい状態」にすることです。
各組織で「品質とは何か」を定義し、
・不具合予防の仕組構築
・不具合発生時の対応の仕組構築
・上記を真摯に実行できる人材育成
ができれば、理想に近づいていくと信じています。
今回の記事では、品質保証部門が
自分たちがラクになるために、他部門に自律して動いてもらいつつ、やりがいも感じる
ために僕が実践している立ち回りを共有します。
専門知識は必要ありません。
特殊な能力も必要ありません。
(まあ、無いよりあった方がより良いですが)
誰でもできるであろう以下の行動を徹底・習慣化すれば、あなたが冒頭で述べたような悩みを感じることが減っていくでしょう。
その行動とは以下の4つです。
- 現場の現実を把握
- 相手の立場の理解
- 組織の道しるべを大切に(会社方針、社内標準、ルール、マナー)
- 丁寧な説明(メリット、デメリット、予想される未来)
これ以降で少し詳しく説明していきます。
現場の現実を把握
物事の行動や判断は「現地・現物・現実」の3現主義に基づくようにすると良いということは、多くのビジネスシーンでも言われていますよね。
(これに原理・原則を加えた5ゲン主義という言葉もあります)
これは、その通りだと思いますし、多くの人も納得する標語だと思います。
ただ、これを継続することが難しい・・・。
経験が豊富になれば、良くも悪くも過去の経験や勘が働くようになり、机上で物事の結論を出そうとしてしまいがち。
経験の少ない人や若手は、現場でしっかりと現実を見ておく必要があります。
そもそも、経験が少ない人は現場で何が起きているか分からないでしょうから、率先して現場から学ぶべきです。
もちろん、経験豊富なベテランも日ごろから現場に顔を出し、現実を把握するようにしておきましょう。
現場では、思いもよらないことが起きていることが多くあります。
「え!こんなこと普通ありえないでしょ!」なんてこともあり得るのが現場と言うモノ・・・。
経験や勘だけで物事を結論付けず、現場で現物を見て現実に基づいた正確な情報を入れることを習慣としましょう。
ベテランでも足しげく現場に顔を出すことで、見てくれてる感を現場に与えることができます。
「あいつ、現場にも来ないくせにえらそうに・・・」と現場によくある不満を持たせない効果もあるのでバカにできません。
現場で現場の声を聴くだけでマネジメントしやすくなるんなら、やらない手は無いでしょう。
「いつも見てくれてる、声かけてくれてるあの人の言うことなら聞いてやろうか・・・。」
と思ってもらえるために。
相手の立場の理解
我々は品質保証部門として、他部門へ不具合対策の指導や是正処置を依頼しなければなりません。
こちらの思惑通り動いてもらいたいところですが、立場の違う人間を思い通りに動かすことはカンタンではありません。
例えば、
製造部門は製造部門の立場があり、品質だけでなくコストや納期の厳しい要請も受けています。
効果のある不具合対策とは、机上でもっともらしい対策を立てることだけではありません。
不具合の対策は、実行されて継続されてこそ効果を発揮するものです。
つまり、
実際に実行されうる、現実的で継続可能な対策を立てることが求められます。
そのためには、動いてもらう相手の立場を理解し、相手の置かれた環境下でも確実に実施できるかどうかも大切なポイントです。
・常に時間に追われている
・人員不足、予算不足
・人の作業や判断に頼る部分が大きい
など、彼らにも我々と同じような悩みがあります。
対策を確実に、そして継続的に実施してもらうためには、彼らの悩みも考慮した「提案」が必要となってくるでしょう。
現場が「現実的で継続可能な対策」を彼ら自身が納得して実行していくことで、ノウハウの蓄積とともにルールを守る文化の定着にもつながります。
組織の道しるべを大切に(会社方針、社内標準、ルール、マナー)
どんな会社や組織にも行動指針や社内標準、ルールがあると思います。
「どんなものがあって、どういう目的で定められているか」できるだけ多く説明できるようになっておきましょう。
もし方針や標準、ルールが無いのなら、目的を明確にして新しく作り出しましょう。
決めたことを守ってもらうためには、ルールと目的をしっかり理解してもらわなければなりません。
何かを他部門に依頼するときに、個人的なお願いではなく、会社や組織のルールだということを認識してもらうのです。
会社の方針やルールをよく知らないまま業務をしている人は意外と多くいます。
(特に教育や指導に時間を取ってない会社)
ルールは守るものだって教えられてきましたよね?
こういう目的があってこういう法律があるから守ってくださいね!
じゃないと評価が下がっちゃいますよ?
と言い続けて我々のロジックを理解してもらい、そのロジックに従った行動がとれるように導いてあげましょう。
「このロジックに従わなかったから、こういう問題が起きたんですよ。」と言ったらすぐに納得してもらえるように。
逆に言うと、
「故意に従わなかったのなら、責任を問われても文句は言えませんよ。」
と言うこともできますね。(伝える相手のタイプを見極める必要はありますが)
ちなみに、多くの人が守れない方針やルールというものがあるのであれば、それは方針やルールが悪い場合もあります。(あいまいすぎる、理解しにくい、現実的でないなど)
そんな時は「方針やルールを見直す柔軟さ」も持っておきたいですね。
丁寧な説明(メリット、デメリット、予想される未来)
直接現場に手を下せない品質保証部門が、他部門に物事を依頼するときに大切なのが「丁寧な説明」です。
とは言っても、近年は「手短に、結論を言え」と効率を重視する風潮です。
しかし、
端的に結論を述べるだけで意思疎通が図れるのは、相当な信頼関係ができあがっていてこそだと考えます。
端的に結論を述べることを良しとして物事に取り組んでいると、ミスコミュニケーションを招きやすいです。
他部門に自律した品質改善を望んでいる我々、品質保証部門こそ「丁寧な説明」を心がけることが必要だと思うのです。
丁寧な説明とは何なのか。
例えば、不具合対策を依頼する場合、
・依頼の背景
・データ解析、多数のヒアリングから見える現場の実態
・推定される原因
・具体的な対策案(複数提案できるとベスト)
・対策案のメリット、デメリット
・対策を実行することで起こるであろう現実的な未来
などを伝えることだと考えます。
発生した事実を忠実に言語化し、
データ等を用いて信ぴょう性と客観性を付与し、
現実的な対応策の案を複数用意し、
対応策の長所短所を説明し、
取った選択の先にどんな未来が待っているかをイメージさせることで、
彼ら自身が容易に選択と行動を起こせる土台を用意してあげるのです。
そこになぜなぜ分析やFMEAのような論理的な考え方をプラスすると、さらに説得力が増すでしょう。
さいごに
品質保証部門がラクになれるのは、
僕たちがいなくても高い品質のサービスが提供できる組織にしていく
という考え方で立ち回った先にあるものと思います。
品質保証部門は、サッカーや野球などのスポーツのコーチ、学校や塾の先生など指導者の立場に近い立ち回りが求められると僕は考えています。
「指導」と言っても様々な方法があるし、絶対的な正解があるわけでもないです。。。
しかし、少なくとも優秀な指導者は「指導される側」をよく研究しているのではないでしょうか?
どうすれば我々がいなくなっても大丈夫か?
どうすれば、各個人が、各組織が品質もしっかり考えながら、日々の業務で実践・継続できるか?
・不具合予防の仕組構築
・不具合発生時の対応の仕組構築
・上記を真摯に実行できる人材育成
冒頭で述べた上記3点のうち「真摯に実行できる人材育成」が最も手間ヒマがかかる、かつ重要な部分です。
現場で起きている現象を観察し、各個人や各組織を理解しようと心がけ、相手がどれだけ理解しているか確認しながら、丁寧に対応していく
遠回りなように見えるけど、これを地道に続けていくことが「育成の近道」なんだと僕は思います。
品証の仕事はやりがいがある仕事だと思います。
お互い失敗を糧にしながら頑張っていきましょう!
おわり
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