【製造業の品質向上】不良やトラブルを減らすために意識する時間軸とは?

この記事を読んでほしい人
・製品の不良、不具合の再発に困っている

・製造業での不具合再発防止の考え方を整理したい


製造業の最前線では、製品の不良対応に追われている従業員も少なくありません。


様々なトラブルに手を打つものの、再発を繰り返し対応に追われる。
さらに新製品のトラブルが発生し負担ばかりが増加していく・・・。

こうなると人ひとりのチカラで良い方向へ押し返すのは困難になります。

誰が悪いわけではないですが、あえて誰が悪いと言うなら製品開発~製造・出荷に関わる多くの人達「組織全体」が悪いってとこでしょうか。

組織の人間一人一人が、

今よりちょっとでも品質の意識を強く持つだけでも大きく不良は減るでしょう。

ただ、
意識といったような漠然としたモノが品質を担保することを実証することは難しく、かつ効果がすぐに出るようなものでもありません。

よって現場では、トラブル対策には目に見えて分かりやすい物理的対策を取ってしまいがちになるのですが、結果的に再発するケースが往々にしてあります。

トラブルに対して講じる対策には、効果や必要なコストや手間ヒマと密接な関係がある短期的な対策、中期的な対策、長期的な対策があると考えます。

今回の記事では、

20年以上の製造業エンジニアとして従事している筆者の経験を基に、

製造業での不良やトラブル対策と見据えるべき未来について

述べてみたいと思います。

結論は、

短期的対策、中期的な対策を優先して実行しながら、長期的な対策を平行して走らせておかないとそれ相応の再発が起きるよ!

ということです。

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見据える未来の期間と不具合対策の内容

冒頭で不良の対策には短期的な未来、中期的な未来、長期的な未来に応じた対策があると述べました。

ここでは、それぞれの未来に応じた対策がどういう性質のものかに触れてみます。

短期的未来を見据えた対策

短期的な未来とは、今~1年未満の未来を想定しています。

短期的な未来に向けた対策の性質は以下のようなものが一般的です。

短期的対策の性質
・適用後即日効果を発揮する

・大きなコスト、時間はかからない

・ある程度時間が経過すると陳腐化する

・人やモノに変化が起こると効果が薄まる、または無くなる可能性が高い

例)関係者への注意喚起や手順書変更、検査項目の追加、モノや製造プロセスの変更

トラブルが起きたら、まずは迷惑をかけてしまう相手(お客様や社内の下流工程の人達)に、これ以上迷惑が掛からないよう速やかな対応が必要です。

コストと時間をかけていては、相手からの信用を失いビジネス影響に直結します。

よって、多少貧相な内容だとしても、優先すべきは相手からの信用をこれ以上失墜させないことが重要な局面です。

貧相な対策内容でも、適用してから短期間は効果を発揮するでしょう。

しかし、時間の経過とともに組織のその時の状況や人、モノに変化が生じると対策の効果が薄まる、または無くなっていくことは想像に難くないでしょう。

・繁忙期のため、現場の忙しさが変わり対策を遵守できなくなる

・材料の変化や消耗品の影響で対策でカバーできる想定範囲を超える


・人が代わって対策の目的をしらないまま勝手に対策を変えてしまう

など、ちょっとした変化でいとも簡単に不具合が再発してしまうケースは少なくありません。

処置的な短期対策に終わらずに、もう少し手間暇かけた中期的なスパンを見据えた対策が必要です。

中期的未来を見据えた対策

中期的な未来とは、1年~3年程度の未来を想定しています。

中期的な未来に向けた対策の性質は以下のようなものが一般的です。

中期的対策の性質
・適用までにコスト、時間はかかるが、再発防止には効果的であることが多い

・人やモノが変化しても不良の流出を抑えられる

・製品やサービスの構造、ビジネス環境が大きく変わると陳腐化する

例)社内の品質マネジメントプロセス変更、設備の強化、IT技術の活用

トラブルを起こした場合、少なくとも中期的未来を見据えた回答をしないと納得してくれないお客様が一般的です。

よって、最低限お客様への対策報告は中期的未来を見据えた対策を盛り込む必要があります。

ここをマジメにやるかやらないかで、組織全体の品質意識の在り方が変わってくると言っても過言ではありません。

もちろんコスト的な部分は加味する必要はあります。

組織内で「対策にそこまでやる必要があるの?」と疑問に思う人が、「ここまでやって当たり前」と思える領域にまで習慣化すると、後述するトラブルの未然防止への活動がしやすくなります。

長期的未来を見据えた対策

長期期的な未来とは3年以上先の未来を想定しています。

長期的な未来に向けた対策の性質は正直言って一般化できませんが、これまでの経験を通じて感じた個人的意見を述べたいと思います。

中期的対策の性質
・数か月~3年程度のスパンでは効果が見えにくい

・新しいことが習慣化されて組織の文化が変わる

・上流工程で未然防止に手間暇をかけることをいとわない

・製品やサービスの構造、ビジネス環境が大きく変わっても陳腐化しにくい

例)効果的な従業員教育プログラム制定、社内評価制度の見直し、自社の生産・サービス技術への研究投資

次の世代の人が数年後に途方にくれることなく、多少のトラブルがあっても彼ら自身が乗り越えていける組織になっていることが長期的な対策と考えます。

組織文化の継承、または発展のためと言ってもいいでしょう。

組織が、会社がこの先数年、数十年先も存続していくための貴重な財産となるモノであり、お客様に対して積極的にアピールする必要はありません。

自らの組織内で、粛々と腐らずに継続していくようなモノと考えていただければと思います。

しかし、5年先、10年先なんてどんな変化が起こっているか予想できないのも事実。

その時その時の状況によって、柔軟に方向性を修正していくことも忘れないようにしたいところです。

常に繁忙状態の組織では、時間が取れずこのような活動ができないと悩んでいる人も多いでしょう。

この長期的スパンの活動をじっくりと腰を据えて推進する人がいないと、将来的に世代やビジネス環境が変わることで組織全体が順応できなくなる可能性が高いと危惧しています。

ここにリソースを充てれるかどうか、組織の将来を盤石にできるかは組織の管理者の手腕次第です。

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さいごに

品質保証部は、将来発生する不良を可能な限りゼロに近づけてトラブル事後対応コストを減らすことも重要な仕事のひとつです。

事後対応コストを減らすことが、顧客からの信用を得ることにも繋がります。

そのためには過去の苦い経験を未来に活かすべく、短期的、中期的、長期的な未来を意識しながら業務に励むことが肝要かと。

特に管理者は、組織や会社の将来も見据えたリソース配分、仕事の割り当てを行い、長期的な活動に従事できる人員を確保しましょう。

先の世代が苦労しないようにしてあげるのも管理者の責務のひとつです。

おわり

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