今回の記事では、過去記事でも触れてきた
品質保証部が社内の他部門にとって、どんな組織であってほしいか
について、少し言葉を変えて理解度を深めてもらいたいと思います。
※品質保証部門でなくても、どんな仕事にも必要なことです
品質保証部門は、お客様はもちろんのこと、社内の他部門から信頼される部門でないと業務に支障が生じます。
なぜなら、品証部門は基本的に製造現場に対して直接的に手を下せないからです。
どちらかというと、品証部門員は専門的な能力よりも「マネージメント能力が求められる」のではないでしょうか。
誰かの提案や失敗に対して激しく批判だけする
自分はリスクをとらず自己保身のために責任から逃れようとする
そんな人があなたの上司だったらイヤですよね?
では、どんな上司だったらいいのか?
・論理的にアドバイスをくれ、時には部下の気持ちを配慮して励ましてくれる
・部下の失敗に対して個人を責めずに、今後に活かすような声かけをしてくれる
・多少のリスクは引き受けて、決断すべき時に素早く決断して進む方向を定めてくれる
僕だったら、上記のようなタイプが好きですし、そうなりたいと思っています。
個々のモチベーションを高め、個々の能力を最大限引き出し、さらなる成長を促す
品質保証部門という組織も、
関係部門のモチベーションを高め、関係部門の能力を最大限引き出し、さらなる成長を促す
こんなモットーをもって運営すると、社内からの信頼を集め、円滑な品質改善活動ができるようになると信じています。
信頼関係に包まれたチームで仕事をするってとても面白いですよ!
これ以降では、製造業の品質保証部門と製造部門を例にして少し詳しく述べてみたいと思います。
激しく批判だけはNG!時にはリスクをとって提案、決断を
まともな品質保証部であれば「正論だけを振りかざして批判」ばかりすることはないと思っていますが、そういうケースもあります。
たとえば、製造部門が出してきた不良の対策に対して、
「それで不良がゼロになるとは思えない!考え直してきなさい!」
「毎回対策出すけど、まともに定着したためしがないだろ、もっと現実的で効果的な対策を出せ!」
と厳しい対応の品証部門であったとしましょう。
間違ったことは言ってませんね。まったくその通りだと思います。
しかし、その後の相手の挙動をちゃんと考えているでしょうか?
①真面目に考えて再度対策書を出してくる場合
何度かの否決⇒再提出を経て、提出期限に間に合わせるために無難な感じで終わる
↓
1年後、再発
②どこまでリソースかけて対策すべきか分からず、現実的にできもしない対策を出してくる場合
品証部「コレ、本当にできるんだな?」
製造部門「今回はちゃんとやります!」
↓
数か月後、対策が定着しておらず不良再発
まあ、どちらも「あるある」ですよね。
何度も言いますが、品証部門は基本的に製造現場に対して直接的な手を加えられません。
よって、「責任元部門にしっかり対策してもらわなければ困るという立場」にあります。
もちろん、責任元部門の責任の範囲でやらせて成長を促すという考え方もあるでしょう。
しかし、品証部門が上記①、②のような対応だけだと、品質改善を他部門任せ(丸投げ)にしてしまっているのと同然です。
製造部門は、
製造品質を確保しながらコスト削減と納期短縮
という複数の大きなミッションを背負っています。
不良をゼロにするには、○○すればいいのは分かってるけど、工数も莫大に増える、設備や消耗品コストも多くかかってしまうし・・・と悩んで明確な方針を打ち出しにくいでしょう。
製造部門のトップがハッキリとした方向性を示し、「多少の犠牲を払ってでもこの不良を無くそう!」となればいいですが、それはそれで製造部門のトップ任せです。
品証部門は品質の事だけ考えて批判ばかりしているだけでいいのでしょうか?
多くの場合、品質保証部は社内の第三者的立場として存在しています。
「第三者として批判だけでもいいじゃん」と言われればそれも間違ってはいないでしょう。
し・か・し、ですよ
それでも品質保証部門は、ちゃんと会社としての品質が上がっているか、品質へのコストが過剰でないかということを把握し、緩厳調整しないと
品質が一向に良くならない
品質は良くなったが、会社の利益を圧迫し低利益体質になる
といったことにつながることを留意しておく必要があります。
さらに、批判だけの品質保証部を他部門はどう見ているでしょうか?
「あいつらは理想をいうだけでいいよな~」
「俺らが本当に困った時に頼りにならないくせに」
といった見方をしている場合が殆どです。※ヒアリングによる
正直に言うと、結果さえ出してくれれば他部門が何を思おうがどうでもいいです。
しかし、品質保証部にそんな負の感情をいただいたまま一緒に仕事をしていては、会社全体のパフォーマンスが落ちると考えます。
結果として、
・自分たちの都合の悪い情報を出さない
・実態をぼかして説明する
という関係性になり、問題の本質を知るために必要なディテールが得られなくなってしまい、問題解決の対策が本質から外れる可能性が高まるのです。
多くの場合、問題の解決策は以下になるでしょう。
1)物理的に起き得ない対策
2)確実に不良を検出する対策
3)不良が発生、または流出しないプロセスにする仕組づくり(未然防止含む)
僕は、問題の根本解決には3)が重要と考えています。※過去記事参照ください。
不良を出さないプロセス作りには、現場の実態を正しく知らなければいけません。
現場の実態を正しく知るために、関連部門との信頼関係が必要。
そして、
信頼関係を得るためにはGive and Take(ギブ・アンド・テイク)の精神がカギですよ
となるわけです。
品証部門にまず必要なのは『Give(与える)』と考えます。
関係部門と信頼関係を築く方法とは?
では、もう少し具体的にどのように『Give』していくのかについて述べていきます。
どんな情報やモノを与えてあげるのが良いのでしょうか?
・不良原因調査のための各種分析データや問題解決手法を提供する
・必要な設備を品質保証部の費用で買ってあげる
・過去の不良対策データをもとに改善策のアイデアを出してあげる
・プロセスのリスク抽出する仕組を作ってあげる
どれも、製造部門にとってはありがたい話です。
これらのうちどれか1つでも2つでもやってあげると品証部門の信頼度は上がっていくでしょう。
加えて、もう一点。
製造部門が自律して判断、行動できる基準や方針を与えてあげる
ということを述べたいと思います。
「製造部門が自律して判断、行動できる基準・方針」とは何なのか?
この言葉で僕が言いたいことは、冒頭で述べた理想の上司像
多少のリスクは引き受けて、決断すべき時に素早く決断して進む方向を定めてくれる
に繋がることを意味しています。
製造部門単体では、どこまでお金や時間のリソースをかけて対策していいか迷うケースも出てきます。
品証部門は取るべきリスクの種類を選択し、ある程度明確な方針を打ち出してあげると、製造部門は方針に従って自律して動きやすくなります。
①何百、何千万円もの投資をしてでも不良をゼロにしなさい
②最低限、今よりも発生率を下げれる対策で良し
③この程度なら現状のままで良いので注意喚起や指導レベルで良し
上記のような例は賛否両論あると思いますが、まずは決めてあげること。
上記①は、短期的な会社へのコスト面のリスクを品証部が負う、または経営層にリスクを取ってもらうための説明責任を負う
例)人間のケガや命に関わるような影響につながる不良の場合の判断(製品の場合、ユーザー側での使われ方も考慮する必要がある)
上記②は、低リターンというリスクを負う(王道の選択)
例)慢性的に発生する機能的な不具合、著しい外観上の不具合
上記③は、ある程度のお客様へのクレーム対応やむなしというリスクを負う
例)軽微な外観不具合など、多くのユーザーにほぼ影響を与えないと社内で合意できる場合の判断
つまり、品証部門の責任としてリスクを取り、リスクに見合ったリターン(お金、信用)を得るという感覚を持つ。
「品証部門としてリスクを負うこと」を製造部門に認知してもらい、Give and Takeの関係を理解してもらうということです。
Give and Takeの関係によりお互いの信頼関係を築いていく。
もちろん、すべてうまく事が運ぶわけではありません。
しかし、お互いが合意した内容で失敗したら、「次はあんなことがないようにしようぜ」とレベルの高い合意を取りやすくなると思いませんか?
目先にとらわれず、数年先に組織が大きく成長していることを目指してやっていくといいです。
これを繰り返すことで部門間の信頼関係は強固なものになっていくでしょう。
自分たちの代わりにリスクを取ってくれている部門(または人)と仕事をしていると考えたら、
モチベーションが高まり、
自分の役割内で努力し、
結果として成長できる
と思いませんか?
さいごに
自分が取ったリスクを明示する。
「簡単に言うけど、どうやって取るリスクを選べばいいんだよ!」
という声もあるでしょう。
品証部門に限った話ではないですが、そこに明確な答えがないのが現実です。
業種、製品やサービスの使われ方によってリスクの度合いは違います。
玩具に使われるネジ1本を締め忘れても、航空機では機体に使うネジ1本でも締め忘れてはいけないと思いますよね・・・。
結局リスクの定義は、その組織で決める、場合によっては個人で決めるしなかいのです。
組織または個人が納得できるリスクの取り方を考え、そのリスクに伴った責任を行使し、手にした結果を検証し次に活かす。
このような人材が最強なのかもしれませんね。。。
そんな人材を潰さないためにも、上に立つ人は
大きな失敗になりそうな案件には、ちゃんと待ったをかける、
ある程度の許容できる失敗の基準を持ち、
その範囲内の失敗であればチャレンジした個人を責めず、
次の成功の糧となるように導く
ということが必要なんだな・・・とこの記事を執筆しながら改めて思う次第です。
信頼される組織、個人になるために上手にリスクをとれるようになると仕事がもっと面白くなりますよ。
おわり
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