【幻の品質保証セミナー】自作資料と目的、意図を公開します

品質保証セミナー資料解説
この記事を読んでほしい人
・品質保証についてのセミナーを受けたいと思っている方

・社内の勉強会の進め方で悩んでいる方

・組織内メンバーに自ら考える機会を与えたい方

当ブログでは、これまでに「製造業の品質保証部」のジャンルでいくつかの記事を投稿してきました。

その内容は、

実際に品質保証の仕事を経験して感じたこと、実践してきたことを通じて、今後「自分が納得いく仕事をしていくためにどうしていくべきか」を自分自身に向けて言い聞かせているという感じです。

自分自身に言い聞かせるつもりで考えを述べているだけですが、

自身への強制力を持たせる(有言実行する)ため、ブログという形で多くの方に見ていただいても恥ずかしくないレベルで考えを整理し、ネット上に発信しています。

縁もあって多くの方々に僕の記事を読んでいただき、直接メッセージをいただく機会も増えてきました。

同じように「良い仕事をしたい」と思っている多くの方に読んでいただき、反応をいただいているからこそ、しっかり自分の考えを発信し、有言実行して新たな気づきをさらに発信していきたいと思っています。

読者の方々には本当に感謝の気持ちしかございません

この場を借りてお礼申し上げます。

そんな私に「あるメーカー」の品質保証部門管理職の方から、品質保証について講演の依頼が来ました。

講演やコンサルで金を儲けようと思ったことはないので正直お断りするか悩みましたが、せっかくのご縁と自分自身への成長のために無償で講演をさせていただくことで調整をさせてもらいました。

しかし、

結果から述べますと、双方の事情により講演は実現しませんでした。

依頼主も残念がっておられただけに、私も残念な思いです。

そこで今回の記事では、開催できなかった「幻の講演会」で準備していた

・私が準備していた講演会資料
・資料内容の意図


を公開します。

今後このような講演をすることは二度とないかもしれないので、私の考えの記録も兼ねて残しておきたいと思います。

スポンサーリンク

品質保証についての講演の形式

まず、講演の形式についてです。

今回の講演依頼の目的は、先方の品質保証部門で働く方々に改めて「品質保証とは」を考えてもらい、今後一層の成長を促すキッカケとしたいというものでした。

私は、私自身の過去のセミナー受講経験、社内・社外での教育経験から、一方的に設定されたセミナーをただ聴くだけでは自己研鑽意欲が高い一部の人にしか効果がないと思っています。

理由は以下です。

  • 受講者全員がそもそも自分の意思で受講したいと思っていない
  • ただ講師の話を聴くだけでは退屈

このことから、「対話型の交流会」ということで進めようと考えました。

業界は違えど品質保証の仕事を行う同志として、お互い対等に忌憚なく想いを述べ合うという形式の方が

・受講したいと思っていなくても、自分の考えを改めて見直すキッカケになる

・他者の意見に耳を傾けることで、部員同士の相互理解と管理者の部員マネジメントの参考になる

という効果があるのではないかと考えたためです。

上から目線の「セミナー」という印象で受講者が構えてしまわないように、お互いどのような想いで仕事をしているか述べ合える内容としたうえで、私自身の考えをスライドを活用してお伝えするというスタイルとしました。

交流会の時間は1時間程度を予定。参加者の熱量を感じれば最大2時間程度までと考えていました。

これは、

・長くなりすぎると集中力が続かない
・多くの情報を詰め込むと記憶に残りにくい


という考えから、時間的な制約をかけて内容を絞った結果です。

スポンサーリンク

交流会に向けて事前準備したこと

前述の趣旨に基づいて進めるにあたり、参加者の氏名と役職、年齢順が分かるリストを提示していただきました。

これは、この後の説明する「受講者へのいくつかの問い」をするにあたって、お名前で呼びかけたいということと、声をかける順番に配慮したいという想いからです。

お名前で呼びかける理由

・参加者に当事者意識が生まれ、真剣に自分自身と向き合える

・繰り返すと親近感が湧いてリラックスでき、本来思っていることを引き出しやすい

声をかける順番を意識した理由

・ベテランから声をかけると、後に続く人がそれを真似して当たり障りなく回答してしまうことを防ぐ(自分で考えなくなる)

・ベテランさんはすでに出た回答を参考にすることで質の良い回答ができ、威厳を保てる

つまり、メンバー間の人間関係を意識しながら、なるべくリラックスした雰囲気で参加者の本音を引き出したいという意図です。

受講者が思ってることを正直に話してくれないと、管理者は今後の組織運営の参考にすることができません。

うわべだけの回答で

「みんなの意識が揃っている!」

「じゃあ、こういう方針で運営しよう!」

と捉えると舵取りを誤ってしまう可能性があるからです。

スポンサーリンク

交流会内容の構成

依頼主からは、当ブログで記事にしたテーマの中で話をしてほしい内容のご指定がありました。

その内容を噛み砕いて、私なりに構成してみた目次が以下になります。

品質保証交流会のプログラム
交流会資料の目次

表向きは

「同業他社が意見交換をして、お互いに新たな気づきを得たいです!」

と、どちらかというとこちらからお願いしている雰囲気を出すつもりでした。

目次の内容に沿って、前半部分は

私と受講者の距離感を近づけるために双方向のコミュニケーションを図りながら、組織の意思疎通度合いを見えるようにすること

後半部分では

依頼主からの要望のあったテーマについて私の考えを述べる

というストーリーです。

①自己紹介

交流会にあたっては、私はワケあって素性を明かすことができませんでした。

依頼主様とは実際にオンライン会議で顔を合わせ、私に実名と経歴についても説明をしたうえで、当日はすべてを明かせないことを合意いただきました。

しかし、実際にはどこの馬の骨とも分からない人間と交流などできるはずもありません。

そこで、開示できる範囲で私の情報を開示し、少しでもどういう人物なのかイメージしやすいように自己紹介をするつもりでした。

年齢、名字、これまでの職歴(会社名は伏せて)、家族構成や趣味などの情報です。

②現在の業務の自分なりの定義を共有する

まず最初に、

Q1.品質保証部門の仕事とは?

という答えが無いようなあるような問いを投げかけます。

続いて、

Q2.品質保証部門は社内でどういう役割(位置づけ)か?

という問いを投げかけています。

問いのスライド

私なりの考えはありますが、ここでは各受講者が

・品質保証についてどのような定義をしているのか
・社内での自部門の役割をどのように認識しているか

を会話のテーブル上にあげてもらうためです。

普段同じ部門で一緒に仕事をしているメンバーによって、自部門の仕事や役割の定義がバラバラばのか、ほぼ一緒なのかを管理職含めすべてのメンバーが自覚することを目的としています。

当然、組織内で定義されていない場合は人それぞれの回答が出てきます。

その人それぞれの定義のし方によって、仕事に対して取り組む姿勢や方向性が異なることになるでしょう。

組織で同じ方向性を持って仕事をすることは、効率的で効果的なアウトプットを出すのに欠かせない

と私は考えています。

個人の想いを否定する必要はありませんが、管理者は組織内のメンバーが同じ方向に向かって個性を出しながら社会に貢献することを望んでいます。

個々のメンバーが持っているそれぞれの仕事の定義を知ることで、個々への指導のし方の参考になればという意図があります。

そして、会話しながら資料の空白部分に各メンバーの回答をその場で入力し、全員で共有しようとしていました。

改めてみんなの想いを文字に起こして眺めてみると、いろんな気づきが出てきます。

「あの人は、または上司はこんな想いで仕事してたんだなぁ」

「みんな同じだと思ったのに違うものなんだな」

「絶対違うと思ってたのに、あの人と私は同じ捉え方をしてたんだ…」

「あの人は期待する方向とズレた認識をしてるなぁ」

といったような気づきです。

他の人の想いを認識すると、それに見合った対応ができます。

自分の意見を表明し、相手の意見に耳を傾けることで相互理解が深まり、業務上での相乗効果が生まれることを期待してのことです。

さらに、自分の意見を公の場で表明し、文字に起こして記録することで強制力も生まれます。
言葉にしたことに対して責任を持ち、有言実行の土台を作ります。

そして、受講者に相手の声に耳を傾ける準備ができたところで私の考えを述べます。

ここでは小難しく考えずに、品質保証を言葉の意味通りのモノだと説明するつもりでした。

組織の仕事の定義はシンプルで分かりやすく、共通のイメージを作れるものがベスト。

品質を保証するという本来の意味を改めて認識し、この意味通りの行動を自分のこれまでの業務にプラスしてもらえれば、それぞれが向かう方向が揃うと考えました。

私の考えが受講者の心に刺さるかどうか分かりませんが、刺さればベスト。
一部の人間に刺さればベター。

全ての人間に刺さらなくても、少なくとも今後組織を導いていく管理者が今の現状を知り、どのように組織を運営していくかの手掛かりにはなるでしょう。

仕事や役割の定義なんて明確な答えはありません。

ここでの対話は、多様な人物が同じ方向に向かって進むためのキッカケづくりに過ぎないということです。

③各個人がどのような想いを持って仕事をしているか共有する

続いての問いは

Q3. 品証の仕事で面白いと思うところは?

Q4. 品証の仕事で面白くない、イヤところは?

というものです。

問いのスライド

当然ですが、人それぞれどう思うかは自由なので模範解答などありません。

各個人が今の業務の何にやりがいやモチベーションを感じているのか、何に我慢しながら業務をしているかを共有することが目的です。

ここでも、資料中の空白部分に受講者の回答をその場で入力し、共有するつもりでした。

意図は2つあります。

①受講者それぞれの感情と普段の行動のギャップ有無を知ることで、お互いの理解を深めてほしい

②管理者にとっては、部門員の適材適所推進、組織内の不安材料を取り除く活動の根拠としてもらいたい

①は部門メンバーのチームワークをより良くするためですが、特別重要視していません。

最も重要なのは②です。

組織のトップは、部下が普段どのようなことにやりがいを感じ、どのようなことに負の感情を抱きながら業務に取り組んでいるかを知っておくべきだと考えます。

部下の適正によって与える仕事や機会を調整し、自信をもって、安心して働ける環境を用意することが個人にも組織にとっても有益であることに疑念の余地はないのではないでしょうか?

特に、品質保証部門というのは嫌われ役となることが多い部門です。

それが仕事とはいえ、好き好んで嫌われたくないでしょう。

そんな部下の気持ちを汲んだうえで、自部門と他部門のコミュニケーションを円滑にするための環境づくりをしなければなりません。

もちろん普段から同僚間、または上司-部下間でコミュニケーションが取れていれば問題ないので、ここでは改めてその機会を与えたにすぎません。

④各個人の理想と現実の認識を知る

ここでは、各個人のQCDへの意識の理想と実態を見えるようにすることを考えました。

理想と現実のギャップに基づいて問題や課題を整理するのがセオリーです。

受講者全員の理想とする仕事のスタンスと実態の状況をヒアリングします。

当ブログの記事内でも何度か触れていますが、全員のQCDの意識は揃ってないといけないと考えます。

特に上司と部下の意識が合っていないなら合わせる必要があるということを伝えたいと思いました。

多くの現場では理想と実態に乖離があることがよく見られます。

それぞれの理想と現実の違いをチームとして認識し、チームとして問題や課題に取り組むキッカケになればと思いました。

もちろんそれはチームや部門内にとどまらず、

他部門含めた会社全体の意識を合わせていくことも業務の一つと捉えてもらえると仕事がしやすいですよ!

ということを言いたかったのです。

意識を合わせていく一つの方法として、品質保証部門が常に意識する「品質の定義」を考えてみませんか?ということで参考までに私の思う品質の定義を述べています。


ここまでの内容で、この交流会の目的はほぼ終わったと言っていいです。

正直なところ、この後のセクションはオマケみたいなもの。

それだけ組織の理想と実態を明確にし、問題と課題を見えるようにすることが大切と考えるからです。

己を知り、組織の中の役割を認識すれば、やるべきことは自ずと分かってきます。

方向性さえ決まれば、仕事のやり方はどうでもいいのです。

それぞれの得意な方法で同じ方向に進んで、個人で、そして組織としてアウトプットが出せれば良いのですから。

この後のセクションでは、

「こういう考え方もありますよ~」

と選択の幅を広げてもらう程度のモノと考えてもらえれば。

スポンサーリンク

後半部分の考え方や手法論など

ここからは、細かく解説するのもメンドクサイのでサーッと流します(笑)

ほぼブログ内に書いてある内容なので、興味のある方はリンクを貼っておくので読んでみてください。

ここにきて雑になってしまいますが、それだけこの交流会では「さほど重要ではない」ことなのです。

品証部門が存在しなくて済むようにと思って仕事するのもいいかもですよ~

というものです。

QC7つ道具、FTA、実験計画法etc・・・様々な品質管理、分析手法がありますが、

・正規分布と工程能力指数
・なぜなぜ分析、未然防止手法(FMEA)

を知っておくだけでも、他部門やお客様と十分会話できますし、仕事も捗りますよ!

という紹介です。

現実的でないこと、やれないことを不具合対策にしてしまうと、本当に解決すべき問題や課題が見えなくなって組織が廃れていきますよ~

というお話です。

目の前やちょっと先だけを見据えた不具合対策だけでなく、長期的なスパンで見た施策も並行しておくことで組織が成長しますよ~

という話。

品証だってコスト削減に貢献できますよ~

というお話。

スポンサーリンク

さいごに

今回予定していた交流会を実現することはできませんでしたが、依頼主との事前の内容擦り合わせで交流会資料と私の意図は伝えていました。

結局、依頼主様自身で社内の勉強会という形で開催され、当ブログの内容を基に意見交換をしたことを連絡いただきました。

そこには、

「部下一人一人の仕事に対する考えや個人の想いを知る良いキッカケとなり本当に良かった」

というコメントも添えてありました。

今回の交流会における私に課した使命は、

依頼主である管理者と部下のベクトルを合わせ、今後の組織運営の糧にしてもらう

というものです。

私自身が講釈垂れる必要もなく、「結果的にある程度目的を達成できた」と考えると理想的な形だったのかもしれません。

外部のチカラを借りることなく、組織内で良いディスカッションができたなら、その組織の成長のために最も良いことだとも思うからです。

組織が自律して成長することが望ましいと私は考えます。

そのキッカケとなることができたということで、私自身も大変うれしく思いました。

働く人個人個人のレベルアップも大切ですが、メンバー全員が一丸となって動ける組織作りが会社にとっても結果に結びつきやすいと思います。

私自身も、管理職のリーダーシップが重要だと改めて考えさせられた良い機会でした。

このような機会をいただき、誠にありがとうございました。

おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました