- この記事を読んでほしい人
- ・受け身の品質保証から「攻めの品質保証」に転じたい製造業の品質保証部員
・「現場の品質意識」を高めるためにはどうすべきか思案している品質保証部員
・品質保証部の仕事に「やりがい」を見出したい品質保証部員
この記事は、
・自社工程内の不具合改善がすすまない
・市場不具合の対応で「てんてこ舞い」
・社内の品質に対する意識が薄い
と嘆きながら疲弊している品質保証部員に向けた記事です。
これまで複数社で製品開発、品質保証の仕事をしてきた僕の経験を基に、過去記事で品質保証部のあり方や役割、上層部への働きかけについて述べてきました。
しかし、実際に現場を動かすとなると
トップダウンだけでうまくいけば最初っから苦労などありゃしません…。
実際に動いてもらうのはさまざまな想いを持ちながら日々の業務をこなす現場の一人一人です。
- 金のために淡々と働く人
- 高い意識で働く人
- あまりなにも考えずに働く人
- 会社の待遇に不満をもちながら働く人
などなど、いろんな人がいます。
理論で固めた仕組みを持ってきて、ただ「やれ」と言っても「やらされ感」があるようだと真の意識改革は望めないでしょう。
意識改革には、理路整然とした仕組みの構築と泥臭い草の根活動の2本柱で行く必要があると考えます。
今回は、
事務系を納得させる理論や仕組みではなく、現場のモチベーションをあげて、彼らの自律改善を促すための取り組みについて考察してみたいと思います!
現場が動かない、担当が動かないというのを他部門や管理職のせいにしても状況は変わりません。
ここはひとつ、我々から会社全体の意識を変えるために行動を起こしてみませんか!
ここで提案する施策は以下です。
以降で詳しく述べます。
まずは品質保証部が率先してやってみせる
例えば、未然防止のための施策でFMEA(故障モード影響度解析)などを導入するとしましょう。
未然防止のための施策は、事前に過去の不具合や想定されるリスクを列挙して、それに対する対策を検討・実施しなければいけません。
いくらフォーマットや手順を用意し、考え方を説明してあげても間違いなく現状より手間がかかります
確実に現場や担当者からは、否定的な意見が出てくるでしょう。
もちろん本来は彼らが考えて、彼ら自身で品質を作り込むのがスジです。
そうさせるのが、品質保証部の本来の仕事と僕は思っています。
しかし、現場の彼らの気持ちも理解できます。
彼らは生産性向上と納期という上層部からもわかりやすいノルマと日々戦っているのです。
目の前で顕在化しにくい品質に対する意識が薄れるのも仕方ないかもしれません。
かといって不具合を出していいかというわけではありません
ただ、杓子定規に役割を分断するのは会社内のベクトルが揃ってからにしましょう。
それまではまず、彼らの代わりにこちらが汗をかいて品質向上のために「不良を出さない」、「流出させない」という活動のお手本を見せてあげることが、製造現場含めて他部門からの信頼を得やすいことは経験的に感じています。
できる限り製造現場に立って品質の観点でリスクを抽出し、現場が納得するデータを元に改善策を提示または代わりに実施してあげれば、信頼関係は必ず築けます。
当然、都度声をかけて情報は共有してあげなければいけません。
自分の持ち場で「勝手に何かやってる」と思われると不信感を募らせてしまいます。
その際には、
「ゆくゆくはこの活動をアナタたちがやるんだよ~」
「手間だけど、あとで苦労しないために、会社の利益のために、自分たちのレベルアップのためにやるんだよ~」
というメッセージを発信し続ける必要があります。
そうでないと、「ずっと品質保証部がやってくれるんだ~」と勘違いされちゃいますからね・・・。
「なんで俺たち品証がそこまでしてやんなきゃいけないんだよ・・・」
と思う方もいることでしょう。
ごもっともではありますが、自分が今後苦労しないためにと思えばやれませんか?
今の苦労は、きっと自分のレベルもアップさせてくれますよ!
現場間に競争意識を持たせる
何事も成長には「競争」が欠かせません。
ライバルに負けじと切磋琢磨することで「その業界のサービスの質」が向上していくことは、これまでさまざまなサービスの恩恵を受けてきた我々も十分承知しているでしょう。
製造現場でも当然競争はあります。
製品の出来高や納期遅延などは特に評価に直結しやすいです。
そこに品質に関する指標を持ち込みましょう。
各工程またはライン別の工程内不良率、市場不具合件数、工程能力指数などを従業員全員が見えるようにしてあげることです。
さらに毎日、または定期的に発生した製造ラインの不具合品現品を発生・流出原因とともに展示しましょう。
これは今まで関わったことのある工場でいくつか実施しているところもありました。
(トヨタやデンソーでもやってるそうです)
やはり、全従業員に見られていると自分たちのところは良く見せたいという想いが働くようです。
ただし、不正に印象を良くしようとさせないように「不良を責めない」、「事実のみを正確に伝える」活動とすることが、現場の不評を買わないために必要になってきます。
良いラインは品質保証部として、その工程またはラインを褒めてあげましょう。
また「失敗は成功の元」なので、失敗して不良を作った工程にも「良いサンプルを展示してくれてありがとう」というスタンスで臨むといいです。
彼らのモチベーションアップとともに、彼らの部門内での評価にも影響がでればさらにいいですね。
くどいようですが、このような活動は製造現場で自主的にやるべきことです。
しかし、生産性と納期が優先されることが習慣化したムラ社会では、よほどの覚悟が無いと改革の声をあげることはできないでしょう。
だからこそ、我々品質保証部がその役割を買って出るのです。
最初は批判や白い眼を向けてくる人もいるでしょう。
いいじゃないですか!
品質保証部は「会社の中の警察官」、「嫌われてナンボの部署」ですから。
出した成果に対してインセンティブ(動機付け、報奨)を与える
これは当たり前の話ですね。
働く者の士気をあげるために、出した成果に応じて何らかの称号と金銭を報奨として与えるということは、古代から様々な場面で使われてきた常套手段です。
ですが、特に日本の製造現場ではそのようなことが大胆に行われている企業は少ないのではないでしょうか?
品質に関して言えば、「良くて当たり前」という風潮。
報奨に関して言えば、
自分たちの成果が直接給与に影響しづらい人事評価制度
だいたい周囲と大きく差を付けたがらない昇給、賞与査定
そりゃモチベーションさがりますよね。
しかし、そこを何とかしようというのは品質保証部の仕事ではありませんし、そんな権限もないでしょう。
そこに切り込むキッカケとして、品質保証部で予算をとって独自の報奨金制度をトライしてみてはいかがでしょうか?
たいして意味もない報告会議のための出張や不具合対応のための出張にかかる費用に比べたら、大きく意味のある投資だと思いませんか?
そして、この活動に対する品質や生産性のデータを集計し、現場従業員の生の声を匿名アンケートで集めれば人事評価制度をボトムアップで変えていけるネタにもなります!
現場の生の声というアンケート結果も貴重なデータとなります。
例えば、1年間で下記の指標が高い工程またはラインに50万円を拠出するとか。
・工程またはライン内不具合率
・市場クレームの原因となった回数
・生産性(作業数÷総労働時間)
・工程またはラインの難易度(難しい作業には補正をかけてあげる)
当然、結果は協力会社含め全社にオープンにします。
お金の処理方法は経理や総務と相談しなければいけないでしょう。
請負会社などの社外の人間にはどのように拠出するかの相談も必要です。
さらに、レベル差があり過ぎて特定のラインや工程に高得点が偏りすぎないために補正や救済措置も実情に合わせて検討する必要もあるでしょう(定期アンケート結果を査定方法にフィードバック)。
いろいろ課題はあると思いますが、ある程度の投資で現場が活気づき、自律改善が進むなら安いものだとは思いませんか?
人事制度見直しの社会実験と思ってまじめに取り組んでみると、その実験による挙動自体が会社としても貴重なデータとなるでしょう。
まとめ
・本気で攻めの品質保証部に転じたいと思っているあなた
・現状、慢性的な不具合対応で疲弊し、評価もされず達成感がないと嘆いているあなた
・会社の品質に対する意識が薄いと嘆いているあなた
論理的思考と泥臭い行動の2本柱で、打って出てみてはいかがですか?
欲を言えば、共感してもらえる仲間がいると仕事を進めるのがさらに楽しくなります。
まずは自分の信念をはっきりさせて、共感してくれる仲間を増やすところから始めてみましょう。
【今回の記事のおさらい】
品質保証部から現場のモチベーションを上げる施策の提案
- まずは品質保証部員がやってみる
- 各工程またはラインに競争意識をもたせる
- 出した成果に応じたインセンティブ(動機付け、報奨)を与える
品質保証部の仕事は「やりがいがない」と思っている方!
面白くやろうと思えばいろんなアイデアが出てきます。
短期的な結果を求めるのではなく、数年先にでも活気ある職場に変わっていることを夢見てやれるだけやって、ちょっとでも成果がでたら気持ちいいですよ!
おわり
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