- この記事を読んでほしい人
- ・品質保証部門が社内の警察官として振舞ったらどうなるか?
・社内の警察官としてどういうアクションを起こせばいいのか?
・会社内の品質保証部門のポジショニングの理想像とは?
過去記事で「品質保証部の役割は社内の警察官だ!」ということを述べました。
結構いろんな製造業さんたちからのアクセスがあり、筆者の想像以上の人気記事になっていました。(つたない記事ですが、読んでくださってありがとうございます)
今回の記事では、
・実際に警察官として振舞ったときに社内でどういう反応があったのか
・実際に警察官のように振舞った自分はどういう心境になるのか
という点について実体験に基づいてフォーカスしてみたいと思います。
現時点で至った結論はこんな感じです。
これをポジティブにとらえて、目指すところはコレです。
↓
社内の人は「おまわりさんがいるから安心」
警察官として振舞う自分自身は「みんなの安心のために奉仕する」
という関係が成り立ったときに双方の利害が一致して組織のパフォーマンスが上がると考えます
そんな理想像を念頭において、実情を述べていきたいと思います。
おまわりさんだって「同じ人間」です。
みんなの模範となるべき対象ではありますが、失敗もするし、時には自分がルールを守れないことだってあります(汗)
それでも真摯に反省して、その反省を日々の業務に活かしていければいいんじゃないでしょうか。
社内の警察官としての品質保証部門の役割
社内のルールは法治国家で言うところの法律です。
法律を犯すこと、つまり「犯罪」を抑止して国民の生命と財産を守るという警察の役割を、企業内の警察に置き換えるなら次の2つのようになるかなと。
品質保証部門が管轄する「品質」とはどこまでの範囲か?という議論は尽きないと思います。
ここでは、品質=社会(またはお客様)からの要求に対し、要求通りに再現したモノまたはサービスの「再現度合い」と定義します。
この品質に関する社内のルールは、原則として要求通りにモノやサービスを再現するための管理項目を明確にしたものと言えます。
そう考えると、必然的に警察官としての品質保証部門の主な役割が見えてきます。
社内ルールの違反が無いか現場QCパトロール
服装や定期点検、社内で決められたマナーに至るまで、自分たちで決めたルールが末端で守られているかを現地現物で確認します。
現場の意識が低く、ルール遵守が浸透していないようであれば、現場の管理者に対して杓子定規に警告を出した方がいいです。
そして品質向上への意識が芽生えてきたら、形骸化したルールの廃止や簡略化など見直しで現場の負担を軽くしてあげましょう。
この域に行くまでは嫌われ覚悟で心を鬼にして、違反は違反とキッチリ改善を求めることをおすすめします(※品証部門の上司のサポートは不可欠ですよ!)。
当然、完璧と言わないまでも自らもルールを守らないと人はついてきませんので、自分の制御も忘れないようにしましょう。
開発設計、信頼性評価プロセスでの検問追加または検問内容見直し
どこの企業でも、少なくとも形だけは製品やサービスの開発〜量産・サービス開始までのステップが定められていると思います。
もちろん定められたステップを踏んでプロセスが進んでいれば安心ですが、それはそれで「ルール通りやっているよね?」ということを担保する必要があります。
当然イチ警察官の品証部門が、技術的なことなどの専門分野に口を出すのはハードルが高いと思いますが、社内で決めた「製品や工程の設計品質を担保できるだけのプロセス」を踏んでいるかどうかの検問(第三者チェック)が必要です。
過去のトラブル対応で得た知見や教訓を活かして、設計の信頼性をさらに高めるためにチェック内容の見直しを提案し、社内で新たなルールを作ることも大事な仕事です。
品質意識向上への啓蒙活動(ポスター掲示、教育など)
街中でも見かけますよね。
ポイ捨て禁止!
早めのライト点灯を!
の類のポスター掲示物を。
警察の仕事か?と言われれば必ずしもそうではないですが、意識を上げていくためには「視覚や心に刺さる文句での啓蒙」も低コストで一定の人には効果が期待できる活動の一つです。
もちろんありきたりなセリフや写真などのポスターを貼っても、ほとんどの人には風景の一部と化して伝えたいことが意識に残りません。
・少しでも多くの人の目に入るための場所選び
・少しでも多くの人の意識に入り込むための決め台詞、色使い、デザイン
そこまでやるか?という人も多いと思いますが、こだわりぬいてやってみれば「たかがポスター」でもかなりの効果を発揮する可能性を秘めています。
セールスコピーやキャッチコピーの勉強をして誰もが足を止めて見入ってしまう、そしてお客様に見せても恥ずかしくないポスターを作ってみるのも楽しいかもしれませんよ。
もちろんFace to Faceでの教育が効果を発揮する場合もあります。僕自身もまだまだ未熟ですが、注意すべき項目を上げておきたいと思います。
■品質教育の注意点
・ダラダラこちらの言いたいことだけを言わない
質問したり、ワークショップ形式にしたり手と頭を使ってもらいましょう。
・教育資料に長々と文章を書かない
よっぽどまじめな人でないと一字一句読んでくれないと思って、言いたいことが伝わるような文章配置や文字強調を意識しましょう
・受講者が未来をイメージできるように
受講した人が、受けた教育のおかげで会社や組織、個人にどういう利益をもたらすのかということをイメージできなければいけません。
おそらくこれがイチバン難しいところと感じています。
人間は変化を嫌うもの。ある程度結果が想像できないと不安で動くことができないからです。
これができるなら立派な営業マンとして、立派なプレゼンターとしてどこでもやっていけるんじゃないでしょうか。
・現場トラブル処置対策への協力
現場では日々いろんなトラブルが起きています。現場に入ってみると想像以上に管理がガタガタだったりします。
そのすべてに顔を突っ込むことはリソース的に困難でしょうし、すべてに顔を出す必要はないと思います。
しかし、社内での信頼を得るためには現場の痛みを分かっていないといけません。ある程度はトラブルに顔をだして一緒に悩み、一緒に解決する姿勢をみせるだけでも違います。
自分の得意分野のトラブルであれば、解決策まで提案すれば大きな信頼を得ることができるでしょう。
そうなれば、あなたがイチイチ現場をパトロールせずとも信頼関係でつながった従業員が自律して組織の自治を行ってくれはずです。
警察として振る舞ったときの社内の反応と自身の心境
ここでは、毅然と振る舞って対応した時の相手の反応と、その反応を受けた時の心境について述べます。
まあ、いろんな反応がありますよ。人間だもの。
反応を楽しむくらいの気概がないとやってられないというのも事実です。
ルール違反を指摘したとき
真摯に聞いて対応してくれる人、ウソで取り繕って何も変えない人、逆ギレしてこちらの揚げ足を取ってくる人、何もしない人など反応は様々です。
正直言って無力感や腹立たしさ、孤独感を感じることも少なくありません。
しかし、警察官がそんなことでへこたれるわけにはいきません。
会社の生命と財産を守るための番人として大義と使命感をもって事に当たれば正義は我にありです。
臆することなく進みましょう!
まずは信頼関係を築くことを優先して、厳しく接しながらも相手の立場に理解を示す言動が求められます。
ここでちょっと質問ですが、さきほど述べた「指摘に対しての反応を示した人の例」でどのパターンが組織にとって良くないと思いますか?
①真摯に聞いて対応してくれる人
②ウソで取り繕って何も変えない人
③逆ギレしてこちらの揚げ足を取ってくる人
④何もしない人
これも人それぞれ意見が分かれるかもしれませんが、「 ②ウソで取り繕って何も変えない人 」です。
なぜなら、
ウソをつかれると、それをウソだと見抜けなかった場合に真実が分からなくなるからです。
真実が分からなくなるということは、問題点が表面に現れず改善させることができないということ。
そういうタイプの人には、「別に怒らないから真実を話してくれ」と率直に言いましょう。
罪を憎んで人を憎まずの精神ですよ!
ある程度パトロールが定着して現場を訪れたとき
毎日パトロールをしていると、自分の姿を見られただけで「あ!また来た!」という雰囲気になります。
姿勢を正す人、「チッ」と舌打ちをする人、「今日もご苦労様です!」と言ってくれる人など、これも反応は十人十色。
そりゃあ好き好んで「姿だけで」人から嫌われたくはないのがホンネです。
それでも、
姿を見ただけでルール違反の抑止力になっていると思うと「コストパフォーマンス最高だなぁ!」
と思える心境に達しました。
最初はイヤでしたし、そもそも「現場の管理者がパトロールしろや!」と思うこともありました。
しかし、
パトロールが定着してくると徐々に味方も増えてきますし、実際に意識が上がって現場の雰囲気が変わったり、改善の跡が見られたりすると嬉しく思います。
そして品質向上によるクレームや不具合減少という結果が付いてくれば、感無量です。
最新テクノロジーの導入もいいですが、お金かけなくても品質は上げられる。そういう想いが芽生えてきます。
姿だけで場が締まるなら、分かりやすく目立つ「いでたち」にでもしようかと思います(笑)
今後の警ら活動に向けて
今までの業務を継続して社内の意識が向上してきたら、各組織の自律管理に任せて「困りごとが無いかどうか」の見守り巡回パトロールになればと考えます。
理想は、ドラマとかでよくある「離島のおまわりさん」みたいな信頼でつながった地域住民との関係です。
謙虚に感情的にならず、時には住民(=従業員)の側に立てる社内の警察官になれるように。
困ったときは、本物の警察官ならどうするかという観点で考えると案外活路が見いだせますよ。
正しいことを言ったとしても衝突は起こります。
そんな時は、このブログでも紹介しているタックマンモデルのイメージを信じて組織のパフォーマンスを上げることに大義を感じて粛々とやりましょう。
混乱期の衝突があってこそ、組織のパフォーマンスは伸びていくのです。
さいごに:リアル警察官の気持ちが少しは分かった
この記事で述べたような活動を行うことで、警察官の業務中の気持ちが少しは分かったような気がします。
警察官の方々には「我々のためにお勤めご苦労様です!」と言いたくなります(笑)
・正しいことを言っては嫌われ、間違ったことをしたらボコボコに叩かれる
・プライベートも含めて模範となるような行動をしなければいけない
・時には他人のために危険を承知で現場に飛び込まなければいけない
勤めとはいえ、せめて感謝されるような存在になりたいですよね・・・。
みなさん、スピード違反で捕まっても逆ギレしちゃいけませんよ!
最後に付け加えておきたいのは、ある人間が法の下に市民の安全をコントロールするためには「強制力のある権限」と「権限を持つに値する人間性」が必要であるということ。
このどちらが欠けても組織の秩序というものは安定しないのかなと。
例えば品証部門が「生産ラインを止める」、「開発工程を延伸させる」というような大きな権限を持つのであれば、それを公正に行使できる組織でなければならないということです。
権力を持つに値しない人間、または組織が大きな権力を持つと周りの組織も一緒に腐敗していく。
逆に、権力を持つに値する人物や組織でも、それなりの権力を持たせなければ秩序を安定的に保つことはできない…。
僕自身の改めて肝に銘じておきたいと思います。
この記事に共感してくれたなら、あなたは品質保証部門はおろか警察官に向いていると思いますよ♪
おわり
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